今回は中世西ヨーロッパ特有の封建社会について書いてみた。
封建社会の成立(世界史)
封建社会というのは、封建的主従関係と荘園で成り立つ社会をいう。
封建的主従関係
8世紀頃から、西ヨーロッパにはノルマン人・マジャール人・イスラーム勢力が侵入してくるようになる。
各領主は敵の侵入に対して財産・土地をまもるため、有力者(自分より強いもの)へ土地をたくし家臣となった。
一方、強者は多くの家臣をともない諸侯となる。
やがて皇帝や国王を頂点する主従関係が結ばれる構図ができあがっていった。この構図を階層性(ヒエラルキー)という。
階層性は、皇帝・国王→諸侯(大貴族)→騎士(小貴族)という身分構成だ。
とはいえ、中世ヨーロッパの時点では、皇帝・国王は実質的に諸侯とかわりがなかった。
●恩貸地制度+従士制=封建的主従関係
封建的主従関係はローマの恩貸地制度と古ゲルマンの従士制が結合し成立した。地域防衛のしくみとして、とくにフランク王国の分裂後、本格的に出現するようになる。
ローマの恩貸地制度・・・
土地の所有者がその土地を守るために、有力者に土地の権利を贈与してその保護下に入り、あらためて借りうける制度。
古ゲルマンの従士制・・・
平民が貴族などの有力者の従者となり、奉仕する代わりに、馬や衣食などを含めた保護をうける制度。
封建的主従関係・・・
主君が家臣に封土(ほうど)を与えて保護する。一方、家臣は忠誠を誓って軍事的奉仕の義務を負う。この関係は主君と家臣1対1の個別契約だ。やがて世襲化する。
契約は、主君と家臣が双方向的に守る必要がある(双務的契約)。
契約違反には服従拒否をしたり、契約自体を破棄することも可能。
一人で複数の君主と契約することも可能だった。
●騎士道精神
契約をしてもらう、契約継続のためにはお互いの信用が重要になった。だから、忠節・勇武・弱者へのいたわりなどの道徳観である騎士道精神が生まれた。
●不輸不入権(インムニテート)
封建的主従関係において、王は一つの諸侯でしかなかった。
王権の弱体化で地方分権化して、諸侯や騎士の領地には課税ができないし(不輸)、役人を送り込んで支配することもできない(不入)。
荘園制
荘園は大小の領主(=皇帝・国王・諸侯・騎士・教会)の所有地。ここにいる農民は農奴と呼ばれた。
●農奴
農奴とはコロヌスや没落したゲルマン自由農民の子孫。長い混乱期に身分の自由を失い、領主に保護を求めた人々だ。
家族・住居・農具の所有は認められたが、土地の所有権はなく、移動の自由もない(身分的束縛)。
また、農民に対する裁判権は領主が持っていた(領主裁判権)。
●荘園の内容(10世紀、古典荘園)
- 領主直営地
- 農地保有地
- 共同利用地(入会地)
領主直営地は領主が直接経営。農作業は農奴にやらせて収穫はすべて領主へ。
農地保有地(保有地)は農奴に土地を貸して小作させた土地。貢納させたあと一部は農奴のもとに残る。
共同利用地(入会地)は森林、牧草地。
●地代に関して
- 賦役(ふえき)
- 貢納(こうのう)
地代は賦役と貢納に分かれる。
賦役は、領主の直営地を週に2、3日耕作するというような「労働」を地代として払うこと(=労働地代)。
貢納は、農地保有地からの「生産物」の一部を領主に納めること(=生産物地代)。
●その他
- 結婚税
- 死亡税
- 水車使用料
- 十分の一税
十分の一税は、収穫の十分の一を教会に納めること。
参考文献
学参
- 津野田興一編『第2版 ポイントマスター 世界史Bの焦点』(2018)山川出版社
- 帝国書院編集部編『最新世界史図説タペストリー十八訂番』(2020)帝国書院
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